特集 カレン裁判—‘尊厳ある死’と看護
より人間らしく‘生かす’ための援助を—‘植物人間’看護の現場から
紙屋 克子
1
1北海道大学医学部付属病院・脳神経外科看護管理室
pp.812-815
発行日 1976年8月1日
Published Date 1976/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917945
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
いわゆる‘植物人間’と呼ばれる遷延性の意識障害患者の数は,全国で2000名とも4000名ともいわれ,これまでその実態さえも明らかにされていないのが現状である.しかるに今,はるかに海を越えた国の裁判をきっかけに,植物人間と呼ばれる人々の‘尊厳をもって死ぬ権利’についての論議が,多くの人々の関心を集めたが,これらの論議が患者自身を疎外した別の世界で行われることのないように,またこの論議の結果が,多くの意識障害患者とその家族への,社会的理解の深まりと具体的な救済の道につながるように願って,遷延性の意識障害患者の看護に携わる者として,患者および看護の現状とその周辺の問題について述べてみたい.
一般に‘植物人間’という言葉は,ずい分幅広い患者の状態(例えば,その生命の存続が完全に器械にゆだねられているような人から,経口摂取がわずかながら可能な人,あるいは簡単な合図を交せるが言語系のコミュニケーションが不可能な状態の患者まで等々)を含めて用いられており,患者の状態に応じてもっと厳密な表現を用いてゆかなければ大変な誤解を招くことになるであろう.なぜなら,この言葉が社会的に用いられる場合は,‘人間にあって人間に非ざる人々’というニュアンスが強く,それは,単純な表現上の問題として片付けるわけにはいかない.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.