連載 教育の地平線・22
―「『人が一人死ぬというのはとんでもないことなんだ』という物語を,今後も変わらず書いてゆく」―小説家が語る,「看護師というすごい存在」に期待する資質 重松清さん
本誌編集室
pp.931-935
発行日 2010年11月25日
Published Date 2010/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101597
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なぜ「家族」を描き,ケアを物語にするのか
──重松さんの小説では,先生と生徒,親と子といった教育的な関係を主に扱われていて,特に“家族”に焦点が当たっています。また障害や疾患を抱えた人物をとりまくケアが重要なテーマである点も印象的です。
重松 なぜ「家族」を描くかと言われると,僕にとって一番切実なテーマだったから。うちの子どもがどんなふうに育っていくか,この子とどんなふうにしたらわかり合えるか,それから妻と,夫として「お父さん」としてどうやって生きていけばいいのか,本当にわからなかったから。だから,物語を通じて考えていきたいという気持ちがあってね。人間が抱える生死の悩みや障害──僕の場合だったら吃音(言語障害)が小説のなかで出てくるけど,それとどう折り合いをつけながら生きてゆけばいいのか。僕はだから,それらを「治す」話は書いてないんだ。それらをどう受け入れてゆくか。ネガティブな言い方をすれば「背負っていく」かもしれないし,ポジティブに捉えれば「共存する」と言えるかな。
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