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はじめに
「教育学」は,一般的には,先生やそれをめざしている人たちの学校で「教え育てる行為」をするときに,その方法や考え方を学ぶというイメージがある。それは,よりよい「教え手」になるための学問と言ってもいいかもしれない。大学の授業では,教職科目と呼ばれる教育原理,教育方法,教育史などが挙げられる。そこで学ぶことは,学校教育のことだ。つまり,「教え手」の教育学は,学校での教育を学ぶものなのだ。
そして,近代の学校教育とは,近代国家という概念を定着させていくための社会システムとしてスタートしたことから,そこでは,その国の言葉,その国の歴史などを軸に,「国家」を前提とした「国民教育」をめざしていき,近代国家に資するために人材を育成していくための教育として広がっていくという流れで語られている。
しかし,教育学には,「教え手」のための学問ではないものもある。つまり,教えるということとはそもそもどんなことなのか,を追求する学問である。それには,「教育哲学」「教育思想史」「教育社会学」などがある。
そして,「教える」ということを追求するなら,「学ぶ」ということも追求する必要もあるのではないか。この学ぶということはどんなことなのかを考えていく学問には,「学習科学」という分野があり,それを支えている学問として,「認知科学」がある。そして,「学習科学」は一般的には,教育学に括られている。
この「学び手側」に立った「教育学」は,学校教育を超えて,芸術学や,社会デザイン学などの他領域に越境しつつ,現代思想という視点から横断的に「学習」を考えていこうという流れが生まれてきている。
本稿では,この「学び手」側に立った「教育学」という視点を軸に,先生にならない人のための教育学を考えていきたいと思う。
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