特集 当事者に聞く 障害をもつ学生をいかに育てるか
障害をもって学ぶ看護学生の日々―聴覚の問題は,医療に限らず,どの業界に行っても変わらないはず
赤塚 ゆき
pp.642-643
発行日 2010年8月25日
Published Date 2010/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101518
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「聴覚障碍は関係ありません。大事なのは心です」
私は現在,看護専門学校2年次に在籍しています。私の聴覚障碍の状態は,感音性難聴で,聴力は右70 dB,左65 dB,中高度難聴です。WHOの示す聴覚障害者の国際基準(41 dB以上)では聴覚障害者に該当しますが,日本の身体障害者手帳制度下における聴覚障害者の認定基準は,両耳平均70 dB以上,または片側耳90 dB以上で他側耳50 dB以上,となっており,未認定です。難聴を発症したのは小学校低学年の頃で,軽度難聴から徐々に聴力が低下し,現在の聴力で安定しています。補聴器を使用することで,日常生活においては,口頭でのコミュニケーションも良好にとれ,さほど不便は感じていません。
私が看護師を志したのは,自身の入院経験からですが,まだ聴力が低下する(ひどくなる)前でした。大学進学時には,すでに現在の聴力レベルまで下がっていましたが,看護科を志望しました。しかし,主治医や学校教員,そのほか両親などからも,聴覚障碍があるので看護師はできないと言われ,別の科に進学し,就職しましたが,絶対的欠格条項は改定されたという話を聞き,看護師への夢をあきらめきれず,再受験しました。受験の前に,各学校の説明会を回り,自身の聴覚障碍について話をさせていただきましたが,「音が聴こえないと看護師は難しいと思う」「聴診器が使えないのはちょっと……」という反応がほとんどでした。やはり難しいのか,と半ば諦めていたところに,一校だけ,「聴覚障碍は関係ありません。大事なのは心です」と言って下さった学校がありました。それが今,私が在籍している学校です。
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