書評
―『おとなの学びを育む 生涯学習と学びあうコミュニティの創造』―「省察的実践者」になる第一歩を踏み出す勇気をもらえる
前川 幸子
1
1甲南女子大学看護リハビリテーション学部
pp.219
発行日 2010年3月25日
Published Date 2010/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101423
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
待望の書が出版された。社会教育学者である著者は,成人学習に関心のある人なら手に取ったことがあるであろう『おとなの学びを拓く』(P. クラントン著),『省察的実践とは何か』(D. ショーン著)の翻訳者でもある。その著者が描く本書のオリジナリティは,わが国における成人学習の実践を基盤にして成り立っていること,また著者が教育現場を俯瞰するのではなく,自身の教育実践とその省察を通して成人学習に関する実践の理論を創り上げていることにある。これまで私たちが参考にしている成人教育の方法論は,西洋思想を基盤にしているため方法と成果が明瞭であり,論調に躊躇がない。それだけに魅惑的である。しかし読み進めるうちに,「どこかしっくりこない」という感覚を覚える。今回,著者はわが国の教育や文化に根ざしたおとなの学びに光をあてた。欧米における成人教育を参照し,解釈しながら,わが国の成人学習に実践的に取り組んできた著者だからこそ見えてきたこの道程と展望は,日本の成人学習のありようをグローバルな視点から無理なく映し出してくれる。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.