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●【新しい教育法】「21世紀の質向上と安全教育への取り組み:職種間連携教育の高まり」から
はじめまして。今回始めてリレーエッセイのバトンを受け取りました神谷英美子です。私はアメリカで看護教育を一から受けたため,日本での看護経験や免許がありません。日本の看護師さんたちと“自分が思っている看護”について話をする際には日米の看護の違い,それぞれの利点・欠点に気づかされ,お互いカルチャーショックを受けます。そんなアメリカ滞在10年以上の日系看護師の視点から,こちらの看護教育や日常をいろいろレポートしていきたいと思っています。よろしくお願いします。
『JNE』2009年12月号では,職種間連携教育(interprofessional education;IPE)の重要性が語られています。全米中でも特にこのIPEに力を入れて注目を浴び,同号で取り上げられている「医療の質改善研究所」(Institute for Healthcare Improvement;IHI)の会合に,私も先日参加してきました。死亡事故を起こしてしまった医療ミスの再現と,それに携わった医療者たちのインタビューのビデオを参考にし,多職種にわたる参加者たちで議論しました。なぜこのような医療ミスが,医師の処方―薬剤師の調合―看護師の投薬という3段階をすり抜けて発生してしまったのか。職種間の隔たりやコミュニケーション不足の結果だと意見が多く聞かれました。「年間約98,000件起こっているというアメリカの医療ミスの死亡事故のうち,職間のコミュニケーションが円滑に行われていれば妨げたと思われるミスは少なくとも66%」だとも報告されています。UCSFは医療専門大学ということもあり,他大学に比べIPEが活発に行われています。私が専門とするHIV/エイズケアは,特に多種の疾患を抱えている患者が多いため,医師,看護師,薬剤師,ソーシャルワーカーや栄養士との学際的チームアプローチ(interdisciplinary team approach)が盛んです。私は先学期,全学部の生徒を対象とした「性転換者のヘルス・ケア」と「医療学生のためのエイズ討論会」を受講しました。性転換者やHIV感染者自身の医療現場での偏見や経験,これから私たちに望むことを患者自身の口から聞き,医療者の私たちがそれぞれの分野やチームとしてこれから何をできるかを,多種にわたる医療学生と話す良い機会となりました。
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