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はじめに
近年,看護教育の大学化に伴い,専門基礎領域科目の教育効果についての報告が多く見られる1─5)。また,高度化する医療の面から考えると,多くの知識を効率的に修得させる工夫が必要となってくるが,少子化に伴う大学への全入時代となり,小中高でのゆとり教育などから生じる学力低下の問題も絡んできており,問題が複雑化している。さらに,2007年に示された「看護基礎教育の充実に関する検討会報告書」6)により,カリキュラムの変更が行われ,統合分野の設置に伴い在宅看護論が独立し,他にも看護の統合と実践に関する科目が盛り込まれたことで,時間はますます限られ,学生のレベルに合わせて,専門基礎領域の科目に時間を十分に費やすことも難しい現状である。この限られた時間の中で,学生に効果的な内容を伝える工夫として,日本生理学会special interest groupである「医学生理学教育シェアリンググループ」により,「一歩一歩学ぶ医学生理学(http://physiology1.org)7)が自己学習を支援する方法として紹介されている。
「一歩一歩学ぶ医学生理学」では,(1)生命科学を初学者に提示するうえで最重要な情報を抽出,(2)教育学の「small stepの原則」に則り,自己学習しやすいように,ステップ・バイ・ステップに提示,(3)イメージがわきやすいように,カラーのイラスト,アニメーションを多用,(4)学生が自分で自己学習の進捗状況が確認できるよう,二者択一の「チャレンジクイズ」を提示している(図1)。
2006年の日本看護研究学会8)で「人体の構造と機能」の講義に,自己学習システムを導入したことで,文字の多い教科書を読むより,ポイントがまとめてあってわかりやすいという意見や試験前などの復習に利用できること,自分が理解できていない部分や重要な部分が分かったなどの意見などを報告した。これに基づいて自己学習システムの導入を行ったことで知識面の評価を行いながら,課題を与え,学生の理解力や考える力などを評価していく試みを行っている8)。これらの試みにより,専門基礎科目の教育内容が看護教育と乖離しがちだと考えられている現状を変えるべく,学生がこの教育内容をスムーズに結びづけることができる取り組みを模索している。
そこで,今回,「人体の構造と機能」の講義に,自己学習システムを導入し,知識の修得に関する補助的役割をこのシステムで行い,その他として,理解力や考える力を見る課題を与えることと講義内容に臨床とのつながりを持たせる内容を加えたことで見られた学生の反応と講義への評価についてアンケート調査を行った。
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