書評
―石坂好樹 著―自閉症考現箚記
山崎 晃資
1
1目白大学
pp.929
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101283
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本書の表題「自閉症考現箚記」に惹かれて読み始めた。著者は「あとがき」で,「トレント・Jrの『精神薄弱の誕生とその変貌―アメリカにおける精神薄弱の歴史―』(学苑社)を読んでいるうちに,自閉症も社会的概念であり,そのような視点から自閉症史を考えてみよう」と思い立ち,「自らの興味の赴くところを文献に当たりながら考えるというやり方で原稿を書き,この書名にした」と述べている。まさに著者ならではの興味ある「自閉症史」であり,京都大学の高木隆郎一門の伝統が息づいている感のある著書である。
本書は,まず「野生児の仮面」から始まる。著者は「アベロンの野生児」ヴィクトールを,「歴史上,明確に状態像が把握され,公表された最初の自閉症児であろう」とし,一方では,「診断基準を満たす症状が揃っておれば,自閉症と診断されてよいのであるという現在の診断様式」に疑問の目を向けている。
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