連載 教育の地平線・4
―「今や世界的な教育のキーワードは,オバマも信条に挙げる“エンパシー”。立場の違う相手と共存する心です」―グローバルコミュニケーション力を養うフィンランド・メソッド 北川達夫さん
本誌編集室
pp.365-369
発行日 2009年5月25日
Published Date 2009/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101187
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フィンランド・メソッドに「正答」はない
──OECD(経済協力開発機構)が国際規準で実施する学習到達度調査(PISA)で抜群の成績を収め続けていることから,北欧の小国フィンランドの教育について,日本でも注目が集まるようになっています。ただ,「フィンランド・メソッド」という言葉自体は北川さんの造語ですね。
北川 もともと『フィンランド・メソッド入門』(2005年,経済界)という著書のタイトルに付けたものでした。その本のなかで整理した5つの力〔①発想力,②論理力,③表現力,④批判的思考力,⑤コミュニケーション力〕というのも,日本の読者に理解されやすいように便宜上自分が整理したものですから,実際にフィンランドでこうした名称や区分が使われているというわけではないんです。もともと,アメリカのルイジアナ州などで行われていた観点別評価の言語指導カリキュラムを,フィンランドで90年代前後に教育改革が実施された際に参考にされたという背景もあります。
そのフィンランド教育の根本的な特徴は,「集団での問題解決プロセスを重視すること」と「価値観の共有を前提としないコミュニケーション能力の育成」によって,多様な価値観の上に成り立つ合意形成を図る点です。
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