『看護教育』50巻記念
『看護教育』50巻に寄せる言葉
薄井 坦子
1
1宮崎県立看護大学
pp.4
発行日 2009年1月25日
Published Date 2009/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101094
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- 文献概要
雑誌『看護教育』が第50巻を迎えると知り,当時の雑誌をとりだしてみた。私が看護学を学び始めたのも50年前で,“なぜ実践を導く理論がないのか?”と驚いたからである。学生としては,他者のことを自分が観察・判断して行動しなければならない臨地実習で,確かな判断規準がない日々は苦痛であった。しかし当時は理論どころではなかったと確認できた。
後に,他者への責任を果すための判断規準は,自分でつくり出せばよいのでは,と思い至り,深夜勤務のとき記録を開いて,ひたすら対象特性を描き続けた日々が懐かしい。自分のつくった判断規準が通用しない事例に出会ったことが『看護覚え書』と出会うきっかけとなったのであるが,ナイチンゲールの「不撓の原理」を教えながら,ふと学生たちがかわいそうになることがある。「原理をつかむとどのような事例に出会っても迷わない強さが得られるのだから,看護とは,健康の法則に沿った生活の調整!その人をしっかり見つめる力をつけよう,そして実践で確かめつつ,新しい時代の看護を創りだしてほしい」と励まされても,現実には他者への関心より効率を求められる現場が少なくないからである。でも,人間はすべてすばらしい力を秘めていると信じて学んでほしいと思う。
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