- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
近年,社会は看護に対して高い専門性,とりわけ高い看護実践能力を求めている。その中にはコミュニケーション能力が含まれている。看護基礎教育においては,学生のコミュニケーション能力が不足している傾向にあるとして,2009年のカリキュラム改正にあたり,「コミュニケーション技術」の強化が提案されている1)。これまでの看護教育の中でも,コミュニケーション能力を高めるには,コミュニケーションに関する知識や総論的な心構えを教授することだけでは不十分だとして,技術として身につけるための体験型学習がさまざまな方法で行なわれている2─4)。これらは,学内で学んだ知識や技術を臨床実習の場で,また卒業後の臨床の場で活用できることを期待して行うものである。しかし,設定された場面ではできても,臨床の場では使えない,自信が持てないという実情がある。
こうした状況を踏まえて,筆者らはグループワークや討論の場を設けて,学生が人と関わる機会を通してコミュニケーションに関する自分の課題に気づき,それを克服していく体験ができる授業をしたいと考えた(表)。そのためのツールとして,『複写式ラベル』をさまざまな方法で活用することとした。林は,自身が開発したこの3枚複写ラベルを,人間の知的活動,とりわけ知識の発信・交流及び図解思考の道具(媒体)として用いる理論と技術の体系としてラベルワークを提唱している5)。看護教育において,ラベルワークを用いた教育実践報告6, 7)が行われ,その教育効果の検証も試みられている8, 9)。
今回は,複写式ラベルの応用的活用として,コミュニケーションの促進と学びの深化の2つの目的で用いることとした。複写式ラベルを用いることで人との関わりにおける重要な要素として,学生が“自分の考えや思いを自分の言葉で言う”,“相手の言いたいことをしっかりと聴く”力を培い,「言える」「聴ける」という自信に繋げることができた。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.