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はじめに
看護学の授業で,紙面上の患者(紙上患者)を用いて学生に看護計画を立てさせるなどの演習を取り入れることは多い。しかし,臨床実習経験の少ない看護学生にとって,紙上患者の状態や生活をイメージし,アセスメント,プラン立案などを通して看護を展開することは難しいことであると思われる。
また,講義では単一の機能障害と看護(たとえば,代謝機能障害患者の看護)について学習させることが多いが,実習で受け持つ患者は複数の機能障害を併せもつことが多く,学生には現実とのギャップをどう教えていくのかという課題を感じている。
当看護学科のカリキュラムでは,成人看護学に計60時間の演習をとっている。そのなかで私たちは,「糖尿病患者の看護」を担当している。演習の準備として紙上患者を作成する過程で,教員が提示する,完成された,同一の紙上患者を展開するのではなく,受講している学生自身に作成させてみてはどうかということを考えついた。
しかし,学生に紙上患者のすべてを作成させるのでは,多くの時間をとってしまうこと,また学生によってばらつきが生じる可能性があることから,まず教員が紙上患者の概要や基本的な部分を作成し,次に学生に性別,年齢,職業や合併症,性格,また検査値などを創作させ,演習で使うことを試みた。
演習方法については,後述するが,まず,教員が概要を作成した未完成の紙上患者を,学生個々が完成させることから始めた。
演習を終了し,関わった教員が感じたことは学生が予想以上に演習を楽しみながら多くのことを学んだということである。学生同士が協力し合って作成したので,紙上患者にリアリティがあったということであろう。2005,2006年の2回の試みではあるが,未完成の紙上患者を提供して学生が完成させたものを教材として使うことに意味があるのではないかと考え,ここに報告したい。
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