- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
ホスピス病棟は,現代の医療では治癒が望めない患者を対象として,主に全人的なケアを提供する病棟である。ホスピス病棟で行われている終末期ケアは,今後ますます重要となるであろう。看護教育において,ホスピスケア教育の質を向上させることが求められているが,ホスピス病棟を有している病院の数はまだ少なく,看護学生の臨地実習を受け入れている病院はさらに少ない。そのためホスピス病棟での実習に関する研究も少ない。
このような現状において,本学に隣接する病院にはホスピス病棟(16床)があり,本学看護学部3年生の臨地実習を受け入れている。ホスピス病棟での実習にはほかにはない困難さがあると筆者らは考え,ホスピス病棟での実習教育を支援するための資料を得ることを目的とし,調査研究を行った。
ホスピス病棟での実習を困難にしていることの一つに,患者の「スピリチュアルペイン」に向き合わなければならないということがある。患者は,「なぜ自分が苦しまなければならないのか」「生きる意味があるのか」「なぜ自分なのか」といった「スピリチュアルペイン」(死にゆくことに関連する苦悩,と定義されている1))をもっている。このような苦悩をもつ患者を学生が担当する際には,学生自身が生きる意味や死ぬこと,神や超越者との関係といったスピリチュアリティについて考えざるを得なくなる。これは死生観を養う機会になる一方,死を前にした患者へのケアに困難を感じ,学生自身が抑うつ感をもつこともある。
そこで,本研究ではホスピス病棟実習を通して学生自身のスピリチュアリティがどのように変化するのか,そのスピリチュアリティは抑うつ感と関連があるのか,学生はどのような点を困難であると感じているのかを調べ,今後の実習方法を改良するための資料を得ることとした。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.