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はじめに
1981年に,がんが日本人の死亡原因の第1位となって以来,がんの罹患者数,がんとともに生きている人々(サバイバー),がんで死亡する人の数は増え続け,いずれも近い将来,1.5~2倍になると予測されている1)。そのため,がん専門病院でなくても看護師ががん患者のケアをすることがますます多くなることが予測される。
がんは慢性疾患に位置づけられているが,「がん」という言葉は,死(death)や他者への依存(dependence),セルフイメージやボディイメージの変容による心傷(disfigurement),仕事や役割などの社会的能力の低下(disability),関係性の疎外(distance)などを連想させる隠喩をもっている。
近年インフォームド・コンセント,つまり説明されたうえでの患者の自己決定が尊重され,患者が置かれている状況,病名・病状や治療の選択肢とそれぞれの長所・リスクなどの客観的な事実(疾患:disease)を医療者が説明することが多くなった。しかし,同じように説明されても,患者の病い(illness)の世界は大きく異なる。さらに,病名や病状は説明されても今後の見通しや予後については説明されなかったり,EBM(Evidence-Based Medicine)にもとづいた医療が行われても選択された医療の効果がその患者に表われるかどうかは不確実であるため,がん患者はさまざまな不確かさのなかで生きている。そして医療者自身も不確かさのなかでケアをしている。
このような状況のなかで,ケアはコミュニケーションを通して行われている。患者─医療者間のコミュニケーションは,患者への心理的支援になる一方,患者の不確かさを増強させたり,医療者との信頼関係を損ねたりする要因となるため重要である。がん医療の現場からコミュニケーションについて,およびプロセスレコードを用いた教育について述べる。
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