特集 在宅看護論の授業展開
第I章 在宅療養者の理解と看護
痴呆・寝たきりの状態にある在宅療養者とその家族の看護/【事例】痴呆のある在宅療養者への関わりの実際
大塚 廣子
1
,
萩原 正子
2,3
1前東京都立南多摩看護専門学校
2せりがや訪問看護ステーション
3日本社会事業大学専門職大学
pp.958-967
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100511
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
痴呆症のある人を取り巻く現状
痴呆症の原因疾患には,アルツハイマー型痴呆症・ピック病・パーキンソン病などの神経変性疾患,また,日本人に多い脳血管障害,頭部外傷など多くの原因が挙げられる。在宅で療養している高齢者のなかには,年だから物忘れをするのは当たり前,年をとったから言葉が出なくなったのは当たり前といって,軽度の痴呆症状を見逃している場合が少なからずある。八森1)によると,在宅で療養している高齢者のうち軽度の痴呆症がみられるのは31.1%と推定され,年間10%の割合で痴呆症に移行する。痴呆症の有病率は高齢者の8.5%であると推定され,このうちの10%は治療可能な痴呆症であると述べている。在宅療養生活は外出する機会を減少させ,社会からの刺激も少ないので,痴呆を進行させてしまう要因ともなる。
介護保険では,日常生活動作に支障のない痴呆症の状態にある高齢者の介護認定は軽く判定される傾向にあった。2003年度より適正な介護度認定となるよう,介護認定基準が変更になった。しかし,介護保険サービスは介護認定された額の30%しか利用されていないという。理由は痴呆症にいたるまでの療養者と家族の関係によるところが大きいというが,実際に利用されているサービスは,介護認定時と痴呆が進んだ6か月後に再認定された時とで内容,頻度が変わらないと筒井は述べている2)。
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.