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登場人物
A 大学教師:教育関連学部で社会学を教えている。50歳代,男性。
B 大学生:教育関連学部の4年生。20歳代,男性。
はじめに
A 今回は,前回に引き続き,高校生文化の変遷について考えてみましょう。
B 前回は,四方田犬彦さんの『ハイスクール1968』という本を使って,1960年代後半の東京の高校生のことを検討しました。今回はどんな資料を使うんですか?
A 今回は,僕が1982年に書いた「高校間格差と生徒の非行的文化」注1)という論文をもとに,1980年初頭の高校生文化について振り返ってみたいと思います。もう25年ほど前ですから,現在40歳前後の人たちが高校生だった頃の話になります。
B 四方田さんの本と同じような感じの文章ですか?
A 全然違います。四方田さんの文章は自分の高校時代の体験を回想したものですが,僕のは当時の研究者仲間と共同研究した調査の結果をまとめたものです注2)。僕自身まだ20代で,高校生ともそれほど歳が離れていませんでした。具体的にいうと,東北のAという県の高校を5つ選び,生徒にアンケート調査を行い,あわせて学校の先生方にインタビュー調査をしたものです。もう1つ北陸のTという県でも同じような調査をしましたが,この論文はA県の結果だけをまとめたものです。
A県は,大都市を持たない,人口も少ない県でした。大学進学率も全国平均よりは,かなり低かったです。高校数も少なく,特に私立高校が少ないのが特徴的で,ほとんどが県立高校でした。表1を見てもらうとわかりますが,この調査ではA1,A2,A3,A4,A5という5つの県立高校を調査対象校にしています。
B それぞれに特徴を持つ高校なのですか?
A A1校は,その県では入学するのが最も難しく,大学進学率も高い高校でした。A2,A3の2校は,普通科の高校でA1校ほど入学は難しくありません。大学進学率もあまり高くなかったです。A4,A5の2校は職業科の高校で大学進学者はほとんどいませんでした。
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