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はじめに
専任指導者体制導入に至るまで
臨地実習は,理論と実践をつなぎ結ぶ学習方法1)である。生きた環境の中で,既習の知識や技術を組み合わせて対象に受け入れやすいものとして提供することを,対象の健康レベル・生命現象・環境との関わり・行動変容の過程などを通して統合し,深めていく2)。それは学生に多くの体験をもたらし,その体験を自ら意味付ける貴重な経験型教育の場であり,看護教育において必要不可欠である。よって,教育効果を高める臨地実習指導体制の検討が重要な課題となる。特に重症患者が大半を占める急性期・回復期看護学実習では,学生は過度の緊張感・自信のなさ・不安を体感し,時に自尊感情の低下や意欲の低下を経験3)する。
また実習指導体制をめぐっては様々な問題が存在するが,臨床指導者の抱える問題内容4)を文献から調べてみると,1990年から10年間にわたり変化しておらず,このことから問題はいまだ解決されていないことがわかる。臨床指導者の交代,学生指導と他業務の兼務が,問題克服を困難にする原因になっているようである4)。加えて近年,新卒看護師の看護実践能力の低下が指摘され5),特に看護現場の医療事故が社会問題化するようになった。
そこで山口大学医学部附属病院では,現状況を打開するべく,「臨床における看護の質を高めるには,より質の高い看護学生を育成し社会に送り出す必要がある」との見解に立ち,充実した臨地実習を目指して従来の実習指導体制を変更することとした。平成15年度より,本学保健学科看護学専攻第1期生の専門領域看護学実習の受け入れにあたり,一部病棟において臨床実習指導者(以下,指導者)の専任体制(1名の指導者が全実習期間を通して教官と共に学生全員の指導にあたる,以下,専任指導者)を試行的に導入することとしたのである。これにより,教員と専任指導者の密な連携を図ろうとするものである。
本稿では,実習指導の実際について述べ,また急性期・回復期実習を終えた学生の振り返り記録から,専任指導者・教員の連携体制,特に専任指導者による指導効果を検討したので,紹介する。
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