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はじめに
第5回アジア太平洋ホスピス大会(大阪 2003)の演題発表でRev. Mari Sengoku(本派本願寺ハワイ本部仏教教育所,Rev. とはReverend(牧師・聖職者)の略)がハワイの病院や老人施設における彼女自身の仏教チャプレンとしての活動を報告した。チャプレンはキリスト教系の病院やホスピスでは医療チームの重要なメンバーであるが,仏教チャプレンというのは初めて聞く言葉で,その活動に興味を抱いた。というのは,同大会で我々も「わが国の仏教僧侶によるターミナルケア」を発表したが,その要旨は「仏教僧侶の多くがターミナルケアに関心を持ってはいるが,日本の現状では患者の生存中に僧侶が墨染めの僧衣で病院に出入りすることは認められておらず,十分な活動ができていない」というものであったからである。
ハワイでは人口に占める日系仏教徒の割合は高く,Rev. Sengokuはさまざまな領域でスピリチュアルケアやカウンセリングを実践しているということであった。同じ仏教徒でも日本とハワイではケア提供者としての僧侶の受け入れ方に大きな差があるのはなぜだろう。具体的な活動をもっと知りたいと思い,本年(2004年)1月,彼女の活動の場の一つであるホスピスハワイを訪問した。残念ながらRev. Sengokuは日本に帰国中であったが,彼女の上司Rev. Clarence Liuを紹介され,ホスピスハワイの活動の説明を聞き,その一部である5ベッドのユニットKailua Homeを見学させてもらった。後日,日本でRev. Sengokuに会い,さらに多くの資料をいただき,彼女の仏教チャプレンとして多岐にわたる活動を知り,強い印象を受けた。ここにその一部を紹介し,それを通して日頃筆者らが考える「終末期患者/家族へのスピリチュアルケア」と「死を迎える場」について考えを述べたい。
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