特集1 看護学生の論文 入選エッセイ・論文の発表
論文部門
未告知の終末期患者の生きる希望を支える関わり―患者を支えるチーム医療
森下 志保子
1,2
1兵庫県立淡路看護専門学校
2兵庫県立成人病センター(ICU)
pp.661-664
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100340
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
未告知のがん患者は,心理プロセスのどの状況においても快癒の「希望」を持ち続けると柏木1)は述べている。希望は終末期患者の今ある生をよりよいものにし,一方で,希望の喪失は絶望につながり,その中で死を迎えてしまう可能性を秘めている。
今回私は,肺がんの末期にある未告知の老年期男性を受け持った。骨転移の疼痛で体動が困難であったが,歩行を強く望み,理学療法士が行うリハビリテーション(以下,リハビリ)以外にも自分で運動をしたいと訴えていた。患者は歩けなくなると家に帰れないとの不安を抱き,自分の足で体を支えられるようになることを望んでいた。しかし,骨転移部位は病的骨折を起こす可能性が高く,医療チームのリハビリ目標の不一致で思うように運動をすることができず,患者は苛立ちを募らせていた。
私は患者が要望した時に,それに応じた援助ができるよう安全な床上リハビリを確認し,医療チーム間の目標の統一をめざした。その結果,目標が統一され,患者は看護者の見守りの中,ベッドサイドで運動することができ,「毎日,この運動ができればな」と満足そうな表情が見られるようになった。自己の関わりをふり返り,患者の生きる希望を支える援助について考察を深めたことをここに報告する。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.