特集1 看護学生の論文
入選エッセイ・論文の発表
論文部門
終末期患者の希望を支える看護―粘土細工を勧めてみて
赤松 薫
1,2
1兵庫県立厚生専門学院第一部(投稿当時)
2兵庫県立総合衛生学院助産学科
pp.711-713
発行日 2007年8月25日
Published Date 2007/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100743
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
終末期患者には入院や疾患,治療による苦痛から,自分らしさの喪失,孤独感,社会からの疎外感や,他者とのつながりが脅かされることへの強い苦悩がある。そのため,やりたいことを我慢し,あきらめてしまうことが多いとみられる。特に化学療法を受ける患者は易感染状態や出血傾向となるため,急変や死と隣り合わせの状態である。また,脱毛,悪心,嘔吐,食欲不振などの苦痛も日々感じている。そこで,不安や苦痛を軽減し,希望をもって生活してもらうことが,看護援助として必要と考えた。
終末期患者にとって,近い未来への思いが現実味を帯び,それが実現可能かもしれないと思うことが希望につながると考える。患者の希望を支えるためには,その人の価値観・生活史を知り,それを生かした援助が大切である。林は,「国内外の研究者たちが笑いと免疫の関係,なかでもNK細胞の活性を向上させるということを明らかにしている。NK細胞はがん細胞の増殖を抑える働きがある」1)と述べている。長期の入院生活のなかに笑いがあることで,前向きに,希望をもって過ごすことができるとも考えられる。
私の受け持った患者(以下,Aさん)は70歳台の女性で化学療法を受けていた。明るく社交的ではあるが,心のなかは揺れ動いていて,「自分が死んだらどうなるか」と夜中に急に不安になったり,「退院して自分の身の回りの整理をしたい」と話したりしていた。
報告するにあたり,個人が特定できないように配慮した。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.