特集1 看護学生の論文 入選エッセイ・論文の発表
エッセイ部門
キリストの愛の下に
今井 志生子
1
1県立長崎シーボルト大学看護栄養学部看護学科
pp.648-649
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100333
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高校3年の冬,母が死んだ。頭が痛いと言っていた母が入院して約1週間後,医師に呼ばれて病院に行った。原因不明性水頭症で容態が悪化して,脳ヘルニアを起こしたと聞いた。母はICUに寝ていた。寝ていたというのは,私にはそう見えたのであって,実際のところはその状態を「脳死」と呼ぶらしかった。ただ,その時の私には脳死の意味がよくわからなかった。
私たち家族は,白衣を着て手を洗ってその部屋に入った。母は呼んでも目を開けないし,チューブが身体のいたるところから出ていた。機械の音が鳴り続けている部屋で,人造人間みたいだととっさに思った。変わり果てた姿にただ一つ,私が握った母の手はいつものように温かかった。そんな状態が2週間続いて,母は本当に天国にいった。
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