特集 看護学実習 教員・指導者・学生,三者の体験から
第1部 体験から学ぶ「看護学実習」をめざして
日本赤十字看護大学の取り組み
看護教育における実習とそれを支えるシステム
武井 麻子
1
1日本赤十字看護大学
pp.914-918
発行日 2005年11月1日
Published Date 2005/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100154
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はじめに
日本では,この十数年で看護大学が急増し,今や128校を数えるまでになった。しかも,今後開設予定の大学が,はっきりしているだけでも15校はあると聞く。
こうした看護教育の大学化に伴い,看護教育の中心は,現場で必要な技術や態度を身につける実習から,専門的な知識やものの見方・考え方を身につける講義へと重点を移している。それには,看護大学のおかれた制度上の制約も大きい。
大学では,現代の先端医療を支える専門職者としての高度な知識・技術を教授するという目的に加えて,患者との信頼関係にもとづく看護を展開するための人間性や幅広い教養を育むという目的をもつ。その一方,専門学校と同じ国家試験を受験するための履修条件を満たすカリキュラムを組まなければならないという,言葉は悪いが二重の足かせが大学には課せられているのである。
この条件を満たすため,大学ではどこも過密スケジュールにならざるを得ず,そのために実習期間をぎりぎりにまで切り詰めているところが少なくない。実際,授業や会議の合間を縫って実習指導を行うことは,大学キャンパス内に病院があってさえ難しいことが多く,遠方の実習場まで通わなければならない場合はなおさらであろう。
さらに,臨床の場での見習い教育という色彩の濃かったこれまでの教育方法への反発も手伝っているのだろう,看護教育の中で実習の価値が,以前と比べるとぐっと下がっているように思われてならない。
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