連載 保健福祉システム管理論・2
保健福祉システムを支えるネットワーク
矢野 聡
1
1東京海上メディカルサービス
pp.911-917
発行日 1995年11月10日
Published Date 1995/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901255
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保健福祉システムとネットワーク
医療をはじめ,保健,介護,福祉に属する領域は,医療制度,保健制度,社会保障制度など,従来「制度建て」で説明がなされてきた。前号で述べたように,それぞれに連なる法律の背景と,それを基にした行政組織の裏づけが制度にはあるからである。保健福祉注1)の領域に関連するこの制度は,最近の急速な需要の増大もあって,変化がもっとも著しい分野である。同時にそのことは,サービス供給の優先度がもっとも高い分野ということもできる。最近の保健福祉の分野は,各制度を横断して把握しなければ,また明らかに自然科学など,関連諸科学の成果を導入しなければ理解できないものも少なくない。
したがって前号で見た保健福祉の領域において,制度別によるサービス区分は,これらの需要ないし供給を全体像から表現する手段としては必ずしも適切ではない。これはサービス供給者と反対の,需要者の側に立つとよく理解できる。クライアントにしてみれば,受けるサービスがよってたつ法律の根拠や財源の出所などは,極端に言えばどうでもよい事柄である。むしろ自分自身の生活の中で,残存能力を引き出し,「QOL(生活の質)」を最大化し,「心身の健康感」を味わうことこそが重要なのである。サービス提供者は,あらゆる資源および財源の可能性を検証しながら,クライアントにとって最も効果的なサービス供給に努めなければならない。したがってこのことを強く自覚した学問研究を行わなければならないのである。
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