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はじめに
健康増進法が制定され,ヘルスプロモーションにおける国,地方自治体,個人等の健康に対する責任が明確にされる中,保健師には,地域で生活する1人ひとりの個人を対象にしたきめ細やかな支援から,地域全体を視野に入れたまちづくりや政策形成にいたる幅広い役割が求められている。
その中核となる保健所保健師や市町村保健師(以下,行政保健師)には,新卒時から専門性に基づいた実践能力が必要不可欠とされるが,現場で期待されている実践能力と新卒者の実践能力との間には乖離がみられるのが現状である1)。
文部科学省は,2001年度より「看護学教育の在り方に対する検討会」を設け,大学教育における看護実践能力育成の充実に向けた取り組みを行い,2004年3月には,大学卒業時に持つべき能力を具体的に提示した(在り方検討会第二次報告書)2)。
大分県立看護科学大学では,2001年の同検討会の提案(第一次報告)3)を受け,看護師の看護基本技術に焦点をあてた検討を始め,大学における看護技術の教育のあり方について報告し4),現在,保健師に着目した検討に取り組んでいる。
市町村合併等に伴い,臨地実習の場や実習期間の確保などが難しくなってきており,看護基礎教育の中での保健師教育の在り方を,現場のニーズを十分考慮した上で検討する必要があると感じている。しかし,現任保健師の能力や技術に着目した報告5)は行われているものの,新卒時の習得度を具体的に提示した報告はない。
そこで,本研究では行政保健師を対象に質問紙を用いて,1)保健師が考えている新卒時に習得しておくべき技術とその到達期待度を調査した。さらに,保健師の活動領域別の具体的な活動指針6)が明示されている中で,保健所保健師と市町村保健師の活動内容の違いが技術の到達期待度にも影響を与えていると考え,2)保健所保健師と市町村保健師の認識の違いについても考察した。これらの結果をもとに,3)大学における保健師の基礎技術教育のあり方について検討したので,ここに報告する。
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