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序論
看護学は実践科学であり,看護教育における実習の位置づけは重要である。しかし現実をみれば,実習指導に専念できる教員や臨床指導者は少なく,学生に対して継続的・個別的指導ができる人的・物的環境が整っているとは言い難い。そのような学習環境の中で実習が展開され,評価が行われている現状がある。
実習評価は,学生の実習目標達成状況に対する形成的評価に留まらず,教員および現場担当者による実習指導の良否,成果が問われる機会でもある。実習終了時に行われる総括的評価を公正かつ客観的に行うことは,実習評価の最終責任者である教員の重要な使命である。教員は,人が人を評価する難しさの中で評価するという責任を,常に担っている。
看護学実習に関する先行研究をみると,看護学実習に対する評価者側,即ち教員や臨床指導者に求められる資質に関する研究,看護学実習の一連の過程を評価する研究,学生の実習に関する意識構造等に焦点を当てた研究などは多く存在している。しかし,学生が実習評価をどのように受けとめているか,学生の視点から評価に焦点を当てた研究は少ない。
中谷は,授業過程を評価する学生の視点についての研究の中で,学生は実習評価の評価基準・評価方法の適否について「評価が表面的で主観的である」1)と述べていることを報告している。学生がそう捉えた背景には,どのような体験が存在するのであろうか。
看護学実習において,学生自身の課題や次の実習に向けての努力目標といった,形成的評価の果たす役割は大きい。「評価が表面的で主観的である」という学生の声は,私たち看護教員の実習評価に対する問題提起と考える。
そこで今回,看護学実習評価の妥当性を高める基礎的情報を得るために,看護学実習評価に対する学生の見解を明らかにする研究が必要であると考え,実施した。
研究目的
本研究の目的は,実習評価の妥当性を高めるために,教員・臨床指導者が行う看護学実習評価に対する学生の見解を明らかにすることにある。
用語の定義
「学生の見解」とは,「看護学実習評価に対する学生の受けとめ」をいう。
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