視座
治療成績の評価に共同見解を
津山 直一
1
1東京大学整形外科
pp.211-212
発行日 1977年3月25日
Published Date 1977/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905485
- 有料閲覧
- 文献概要
多年真実であり,優れた方法であると信じられていたものが年月と共に再評価を受け,価値を疑われ他のより良い方法によつて取つて代られたような事実は少なくない.今まで存在しなかつた薬物や器械のような新兵器の登場によつて過去の方法が捨てられるのは医学の進歩であつて当然であるが,そのような因子がなく今まで普及していた考え方そのものに誤りがあつて,真実は別にあることが判明したような場合,われわれは短見や偏見にとらわれて患者に無意味な負担をかけていたのではないかと深刻に考えさせられる.その治療法の主唱,推進者自体からはこのような反省はなかなか生れず,大勢の協力,再検討の結果真価のあるものが明らかになることが多い.欧米の医学会で種々な治療方法の成績を委員会を設けて共通の規準のもとに統計的,客観的に判定しようとする試みがなされることが多いのもそのためである.
先天股脱の徒手整復,ギプス固定のLorenz式治療法が高率に大腿骨頭に後障害をきたすことに批判の口火が切られたのは1947年の第37回ドイツ整形外科学会であつて,その時Hohmannが代表して全ドイツ国内の整形外科教室の成績をまとめて検討したところ,徒手整復後10年目に解剖学的に正常と判定し得たものはわずか10%そこそこであるという事実が公表され,これがドイツ整形外科学会会員に大きなショックを与え,急速に早期診断と最少限の運動制限で治療する諸方法(Frejka,Becker,Pavlik,von Rosenその他)に切りかえられ始めたのである.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.