小特集 医療施設間連携の試みと実践
公的病院と保健所の連携
岡本 祐三
1
Yūzou OKAMOTO
1
1阪南中央病院健康管理部
pp.119-120
発行日 1983年2月1日
Published Date 1983/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207942
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深刻なギャップ■
病院は"治療"の専門機関であり,保健所は"予防"の専門機関である,と言われる.したがって,この両者が協力し合えば,その地域の保健医療水準は飛躍的に向上することが期待される.ところが,現実には,この協力関係は,全国ほとんどの府県において実現していないと言えよう.保健婦さんたちの集会では,常に地域の医療機関や医師の協力,理解のなさに対する不満が渦巻く一方,病院や診療所側からは,医師や看護婦を含めて保健所に対する期待はもちろん,不満の声すらない.ここに両者の間に横たわる深刻なギャップが存在する.このようなギャップが形成された要因を考えると,我が国の戦後の医療社会の構造の変化の歴史に根ざしたものであると言えよう.
我が国が近代国家になって以来今日に至るまで,医療保健活動は大別すると二つの流れに分けることができる.一つは,病院,診療所を中心とする臨床医学,あるいは治療医学と呼ばれるものであり,もう一つは,保健所(及び結核予防会)などを中心とする予防,防疫,環境衛生活動を行うところの公衆衛生活動と呼ばれるものである.しかし,これら二つの流れは,国民の健康水準を向上させるための統一的な構造のもとに,相互に呼応しながら発足,発達したものではなかった.
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