連載 保健所長のひとりごと
地域で求められるもの
大森 豊緑
1
1岡山県倉敷西地域保健所
pp.956-957
発行日 1992年10月10日
Published Date 1992/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902735
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保健所長になって2年目を迎えた。「所長さん!」と呼ばれて,ひとごとのように知らぬ顔をしていることも随分少なくなった。所長という気負いも和らいできたように思う。「良医は国を治す」と少し力んで歩み始めたこの道である。この6年間,果たしてどれほどのことをやってきただろうか,疑問に思うこともある。
私の場合,大学卒業と同時に公衆衛生の道を選び,臨床研修を終えて間もなく保健所に勤務した。保健所は公衆衛生の第一線機関と聞いていたものの,いったい何をどうすればよいのか?入ってからしばらくは,あてのない不安な日々が続いた。臨床の現場では,眼前の患者に対してなすべきことが必然的に決まってくる。一方,公衆衛生の目指すところは地域住民の健康な生活を守る,という非常に漠然としたものである。地域という対象はあまりにも大きく,ましてそこに住む人々の健康へのニーズは計り知れなかった。
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