特集 「健康づくり」がパスポート―海外に飛び出した保健師
わが国の保健師による国際保健活動の歴史と意義
森口 育子
1
1兵庫県立看護大学広域看護学講座(地域看護学)
pp.916-923
発行日 2002年11月10日
Published Date 2002/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902697
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わが国は,第二次世界大戦直後の開発途上国の状況から,短期間で生活の向上を果たし先進国の仲間入りを果たすとともに,現在では世界最高の健康水準を誇るようになった。わが国の地域保健活動の歴史を振り返ると,戦後の困窮した状況下で行政と住民が協力して深刻な感染症や母子保健の問題に取り組んできたのは,まさにWHO/UNICEFが提唱したプライマリ・ヘルスケア(以下,「PHC」と略)を具現化した地域保健活動といえる。特に当時行政の一員として地域に入りこみ,住民の身近で活動した保健師の果たした役割は大きい。私たちが意識するか否かにかかわらず,開発途上国からはわが国の経験を生かした国際保健活動が期待されている。
本論は本特集の総論として,大局的立場で,国際保健活動の基盤と考えられるWHO/UNICEFの提唱したPHCとPHCにおける看護職への期待,開発途上国における地域看護の現状と問題について述べる。次に,わが国の保健師による国際保健活動の歴史について,PHCに関するアルマ・アタ宣言以前,アルマ・アタ宣言後の10年間,1990年以降と3期に分けて,筆者の1973年から現在までの保健師としての国際保健活動の実践・教育・研究の体験と重ね合わせて述べてみたい。最後に,わが国の保健師の国際保健活動における今後の課題と提言について考えてみたい。
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