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はじめに
21世紀に入って社会は大きく流動化している.日本の国内に限ってみても,小泉内閣の規制緩和の大きな政策は,公衆衛生の分野にも大きな変化をもたらしつつある.
昨今,企業経営の好調の波から,日本経済はやや明るい兆しが見えつつあるようであるが,国や地方の行政をとりまく環境は依然として厳しいものがある.
(1) 社会の需要としては,少子高齢という人口構造の中で,サポートを求める人口集団は様々な課題を抱えている.例えば,以下のようなものがある.
ⅰ) 老人の様々な健康問題,介護問題.
ⅱ) 障害者の自立支援の問題(支援を求める障害者に対する地域支援の問題).
ⅲ) 母子保健の問題(出生数の減少と低体重児などの出生と障害発生の問題).
ⅳ) 生活環境の問題(食品衛生,環境汚染の問題).
(2) これらに対応する社会の基本的構造はどうなるのであろうか.
ⅰ) 医療供給体制の抜本的改革が求められている.
○ 医療保険者自体の医療費抑制策
○ 疾病の予防への直接参加(メタボリックシンドローム対策)
ⅱ) 高齢者保険制度の創設.
ⅲ) 医療計画の抜本的改革.
これらは,医療費の増大を抑制するという必要性に厳しく追いかけられているからである.これらの点を踏まえて,地域保健の基本的構造体である保健所や市町村の現場はどうなっているだろうか.
(1) 保健所
ⅰ) 福祉事業との連携を求めて,保健福祉センターなどの組織が生まれている.
ⅱ) 広域化への構造変化が進んでいる.
ⅲ) 健康危機に対応する専門機能の整備.
これらに従って,かつて800余を数えた保健所の数は,500台に集約され,その守備範囲は医療圏を骨格としてとらえ,広域化の方向をたどっている.
このような動向の中で,本来ならばもっと強化されるべき専門的職員,特に医師や保健師など,中核的役割を果たすマンパワーは数的に減少している(表参照).
(2) 市町村
これに対して,「日常的保健サービスは市町村で」という流れが大きくうねっている.
一つには市町村合併による,地方自治体数の減少と大型化が進んでいる.当然,これは機能強化という観点からみるとプラスの面が大きい.その一例が地域保健法施行令による政令市の増加である.
しかし,このように政令市の数は増加しているが,全体としての保健所数,およびそこで働く医師・保健師などの保健医療関係者の数は減少している.これをどう分析・評価するか,大型化によって機能は強化されているのか,あるいは,下部機能(例えば市町村保健センターなど)が育っているのかなどの分析が必要である.
これらの自治体においては,医師や保健師などの専門職の数は,都道府県のそれと比べると相対的に手厚くなっているように見えるが,その実数はやはり大きく減っているようである.この現実の上に,いかにして地域保健の水準を高めるかを考えなければならない.
また,市町村合併による自治体の大型化が進む中で,ヘルスサービスの面ではマイナス面もあることに着目する必要がある.これまで,首長さんのリーダーシップで先進的な保健サービスの実績を持っていた小さな町村が,大型市に合併されることにより,キメ細かな保健サービスの芽がつぶされているという話をよく聞く.これは大変に大きなマイナスである.これらの活動を温存・発展させる手立てを何とか考える必要がある.
以下に,これからの地域保健の取り組みの方向について分析してみよう.
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