連載 病とともに紡ぐ援助論・4
「暮らし人として」/「豊かさと親密さと」
ひらす けい
pp.616-619
発行日 2002年7月10日
Published Date 2002/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902650
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1クール4週間かかる化学療法を4回,その間に放射線療法を33回受け,原発巣がもとの大きさの40%に縮小した時点で,いったん退院することになった。冬に枯れ木であったあたりが,豊かに葉を繁らせた林になっている。外に出ると,初夏の眩しい陽光が,目に滲みる。病との向き合いが終わるわけではないが,病棟での暮らしからの解放は,私に束の間の休息を与えてくれるようであった。
入院当初は,私自身が精神的,社会的,スピリチュアルな健康を損なわないためにも,あえて他者との関係を求め,見舞客の来訪を歓迎していた。とりわけ,同僚たちの見舞いは,現場の情報を伝えてくれる機会にもなっていたので,意識のうえではまだ職業人であることを確認できた。携わっていた事業の実践報告的なものを,協力者の大幅な手助けを得て病室にいる間に書いてみた。このように何らかの形で社会的存在たり得ていると認識できることは,精神の健康を保つうえで重要なことである。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.