特集 児童虐待に介入するための視野と技術
【調査からみえるもの】
「気が合わない子ども」というストーリー
萱間 真美
1
1東京大学大学院医学系研究科健康科学看護学専攻
pp.1022-1028
発行日 2001年12月10日
Published Date 2001/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902540
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「閉じられた環境」をみるために
母親による乳幼児・学童に対する虐待という現象に取り組みはじめてから4年目になる。「虐待」という言葉は,使い方によって全然違う現象を切り取ってくるものだとつくづく感じる。
最近,子どもたちが痛ましい事件のなかで次々に命を失っている。「日本でもついに虐待がここまで増えてきたか」と語られる。確かに,児童相談所が関わる虐待事例は1991年からの9年間で約10倍になったという統計がある1)。家族のありようが多様になっていくなかで,継父や継母による虐待は増加していると思われるし,若い親たちの子育て体験の不足や,思い通りにならないことへの耐性の低下も指摘されている。ただし,この現象がいま突然に始まったものだとは思われない。むしろ,これが表に出るようになったということが重要であろう。
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