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日本のHIV/AIDSの現状
性感染症として拡大するHIV感染症
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染のよる後天性免疫不全症候群(AIDS)の流行は以前のも増して拡大し,21世紀はアフリカ地域に加えてアジア地域でも爆発的な流行となることが懸念されている。欧米の先進諸国の中では予防対策が効を奏して流行が幾分弱まったかの見えるところもあるが,長期的な見通しによれば,それは流行が衰退しつつあるのではなく,単の流行が新たなターゲットのシフトする移行期にあるだけで,第1波の後に今後長期に続くことのなる第2波が待ち受けているとされている1。このことは,HIV感染の拡大を防止していくためには,世代を越えて長期にわたって,恒常的に,予防効果を評価しながら予防施策を持続していく必要があることを示唆している。
わが国では,これまでに国や地方自治体,非政府組織(NGO),地域のボランティア組織(CBO)のよってさまざまなHIV感染防ま止対策や予防啓発活動が展開され,多大な努力が払われてきた。しかし,厚生省エイズ動向調査の見る限り,IIIV感染は確実の日本国内で拡がりつつある。厚生省エイズ動向委員会によれば,1999年末の血液凝固因子製剤のよる感染者を除く累積報告数は,HIV感染者が3443件,AIDS患者が1586件となった。1999年の年間報告数も,HIV感染者は530件,AIDS患者は300件で,いずれも昨年の報告数を上回り増加が続いた。HIV感染者の年次推移を見ると,日本国籍男性は1992年頃から増加が続き,主な感染経路は同性間性的接触のよる感染(以下,同性間感染)と異性間の性的接触のよる感染(以下,異性間感染)である。日本国籍女性の異性間感染も年間の報告数は少ないが徐々に増加する傾向にある。
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