連載 いま知っておきたい環境問題・16
食品添加物
山田 隆
1
1前国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部
pp.584-589
発行日 2000年7月10日
Published Date 2000/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902223
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はじめに
食品添加物というと,できるだけ避けた方がよいものと考えたり,それほどではないまでも,必要悪などと考えている方がいるようである。少しデータが古いが,平成3年に横浜市が一般市民と食品衛生監視員に実施したアンケート結果がある。それによると,
●「食品添加物は不必要,おおむね不必要」
市民:62.1%
●「食品添加物は必要,おおむね必要」
食品衛生監視員:78.8%
●「天然添加物は安心・合成品より安心」
市民:65.6%
●「天然添加物は安心とは言えない」
食品衛生監視員:70.9%
などの点で,食品の衛生に普段携わっている食品衛生監視員と市民では大きな違いが見られた。保健婦の方々は,どのような考えを持っていらっしゃるだろうか?
食品添加物が,なんとなく恐ろしいという感じをもたれるようになったのは,昭和30年に起こった「ヒ素ミルク事件」が原因と考えられる。この事件は,関西・中国地方で,ある特定の調製粉乳を飲んでいた乳児が,持続性発熱,下痢,発疹,皮膚への色素沈着などの症状を起こした事件で,患者数は1万人以上,死者は130八に達した。原因は,粉乳のpH調整用に使った食品添加物の第二リン酸ナトリウムに,ヒ酸ナトリウムが混入していたためであった。この事件を契機として,食品添加物の純度などに,厳しい制限が設けられることとなった。
食品添加物は,ヒトがほとんど一生涯にわたって取り続ける可能性があるものであり,子供も老八も,病人や妊婦も食べるものであるから,その安全性は厳しく追求されなければならない。こういうわけで,厚生大臣が新しく添加物を指定する際には,食品衛生調査会でその安全性などについて十分審査されている。
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