連載 いま知っておきたい環境問題・13
大気汚染物質と花粉症
小林 隆弘
1
,
樺島 麻里子
2
,
今岡 留美
3
,
細川 友和
3
1国立環境研究所環境健康部
2筑波大学バイオシステム研究科
3星薬科大学薬理研究室
pp.242-249
発行日 2000年3月10日
Published Date 2000/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902162
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はじめに
喘息,アレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎など,アレルギー関連疾患が近年多くの国々,特に工業化した国々で増加していると言われている。近年におけるアレルギー関連疾患の増加傾向に関与する因子は多くある。代表的なものは室内におけるダニやゴキブリなど,室外における花粉などの大気中の抗原,食習慣,遺伝的な要因,感染など,また,室内・室外における大気汚染物質などがある(図1)。ここでは,自動車の排気由来の大気汚染物質の中でも問題となっているディーゼル排気がアレルギー関連疾患,特に花粉症に及ぼす影響を中心に紹介する。
花粉症としてよく知られているものとして,くしゃみ,鼻水,鼻づまりといったアレルギー性鼻炎,眼の充血・かゆみなどのアレルギー性結膜炎がある。大気汚染とこれらのアレルギー関連疾患との間に何らかの関係があるかどうかが問題となる。アレルギー性鼻炎と大気汚染との関係について,慈恵医大のグループは東京都の大気汚染地域と岩手県の非大気汚染地域の児童などのアレルギー性鼻炎の罹患率を比較した。大気汚染地域の29%に対し,非大気汚染地域では7%であった。また,大都市,工業都市,小都市および農業地区におけるアレルギー性鼻炎の調査においても大都市が多く,次いで工業都市,小都市および農業地区の順であることも見いだされた。これらのことは大気汚染地域のほうが非大気汚染地域よりもアレギー性鼻炎が起きやすいことを示唆している。
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