特集 移植医療と保健活動の接点を求めて
移植医療の現状と課題
安行 由美子
1
1社団法人日本臓器移植ネットワーク中国四国ブロックセンター
pp.15-20
発行日 1999年1月10日
Published Date 1999/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901917
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
移植医療の現状
1997年10月16日より,「臓器の移植に関する法律」,いわゆる臓器移植法が施行されているが,1年を過ぎてまだこの法律に沿った形での脳死体からの臓器提供は実施されていない。これは,臓器移植法が脳死体からの臓器提供を,「脳死の判定に従い,脳死状態において提供する意思を書面により表示している場合であって,その旨の告知を受けた家族が当該臓器の摘出を拒まない時,または家族がいないとき」に限定しており,さらにガイドラインにおいて,脳死体からの臓器の提供は,日本救急医学会指導医指定施設と大学病院,救命救急センター,日本脳神経外科学会専門医訓練施設A項施設からと限られているという,他の国と比較してもかなり厳格な法律になっていることも関係しているものと考えられる1)。
この1年間に,日本臓器移植ネットワークで入手した臓器提供意思表示カードを持って,亡くなった方の情報は32件であった。このうちで,脳死状態での連絡は3件であったが,いずれも脳死からの臓器提供に至っていない。その理由はそれぞれ,脳死体からの臓器提供のできる施設でなかったこと,感染症の検査結果が陽性であったこと,家族が脳死状態からの臓器提供を望まなかったことであった。
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.