特集 移植医療と保健活動の接点を求めて
保健活動としての臓器移植
前田 秀雄
1
1東京都府中小金井保健所
pp.6-8
発行日 1999年1月10日
Published Date 1999/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901915
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
中崎君無事生還す
1998年10月6日,特発性拡張型心筋症で療養中だった東京都府中市在住の中崎勲君(16歳)は,米国オハイオ州クリーブランドクリニックにて心臓移植手術を受けた。折しも臓器移植法が施行されて1年目のことだった。特発性心筋症治療のための心臓移植は欧米ではかなりポピュラーな術式であるものの,日本では未だ1例も経験がなく,また臓器提供者も不在であるため,やむなくの渡米による手術だった。
臓器移植は,昨年臓器移植法が施行されたこともあり,これまで以上に将来性ある医療として大きく注目を集めている。しかしながら,法施行後1年余り経つ現在,脳死に伴う臓器提供による移植手術は未だ1例も行われていない(1998年11月現在)。そんな中で,保健活動と臓器移植の関わりはごくわずかであり,せいぜいいくつかの保健所で骨髄移植のための1次検査を行い,また臓器移植カードの置き場になっている程度だ。何か対岸の火事として他人事のような雰囲気ではないだろうか。
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.