連載 感染症 Up to Date・36
最近のHIV/AIDSの状況と課題(その1)
林 素子
pp.768-769
発行日 1998年9月10日
Published Date 1998/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901847
- 有料閲覧
- 文献概要
はじめに
本稿は,1995年にプロテアーゼ阻害薬が市場に出て以来の最近の世界のHIV/AIDS流行について2回にわたって報告したいと思う。あえて,世界の状況を報告するにはいくつかの訳がある。世界の状況を知ったところで,自分たちには関係ないと思われるかもしれないが,まずはよい意味でも悪い意味でもHIV/AIDSの劇的状況を感じていただければと思う。
幸いにしてわが国においては,まだHIV/AIDS流行はアフリカ諸国などと比べて問題にならない状況ではあるが,着実にHIV感染者は増加している。わが国のようにHIV/AIDS流行以来,年々感染者数が増加傾向をたどっている先進国はまれである。わが国の患者・感染者は,男性では20歳代から40歳代に分散し,女性では20歳代に集中している1)。1996年には,感染全体の8割以上が国内で感染している1)。その一方で,全国の保健所でHIV抗体検査を受ける人の数は減少している。これらのことから,今後わが国で一層のHIV感染拡大の恐れが懸念される。
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.