特集 思春期の健康—現代の抱える心の問題
健康危機過程としての思春期—いま,何を語りあわなければならないか
吉川 武彦
1
1国立精神神経センター精神保健研究所
キーワード:
心的エネルギー
,
こころを育てる育児
,
こころの危機管理
,
間伸び
,
思春期保健
Keyword:
心的エネルギー
,
こころを育てる育児
,
こころの危機管理
,
間伸び
,
思春期保健
pp.438-444
発行日 1998年6月10日
Published Date 1998/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901784
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要約
思春期問題の歴史的変遷について見る必要がある。蓄積されるべき心的エネルギーが乏しくなったために,1960年以降の若者の社会的抗議行動は次第に矮小化してきている。抗議行動の矮小化のみならず,危難に対する身の処し方も下手になり危機管理能力の低下をもたらしている。肉体的・精神的・社会的な健康危機を短期間に歩かなければならないのが思春期であるが,その思春期が,いま,大いに間伸びしているので不安定なまま過こす期間が長引いている。この間伸びは,生物的な要因による成熟の加速化によってもたらされたばかりか,社会的な要因による成熟の遅延がもたらしたものである。では,私たちは,どうしなければならないのであろうか。そこで,自分らしさを大事にする「こころを育てる育児」への視点を提供し,こころの成り立ちやこころの育ちから思春期を見つめることを提案し,思春期問題行動を個別的に論じたり対策を立てようとするのではなく,こころの危機管理をめざす思春期保健活動を広げることが問題解決の近道であり,いま,これが緊急的に必要であることを述べた。
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