特集 思春期の健康—現代の抱える心の問題
嗜癖(アディクション)とは
信田 さよ子
1
1原宿カウンセリングセンター
pp.451-454
発行日 1998年6月10日
Published Date 1998/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901786
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要約
嗜癖とは,生存を危うくするような行動の悪習慣である。一見,現実逃避と思える嗜癖だが,その動機は,孤独や緊張といった問題の解決であり,よりよく生きようとするからこその嗜癖であることを理解しなければならない。
また,嗜癖とは人間関係のすり替えであり,本人の病理より,取り巻く人間関係を変えることが治療として有効である。嗜癖は,家族など周囲の人間が,本人への愛情を背景として,心配し何とかやめさせようと世話をする行動(イネーブリング)によって,逆に遷延化する。特に,思春期の若者の場合,親が子どもを立ち直らせるためにコントロールしようとしたり,逆に問題行動の責任を代わりに背負ったりすることによって,嗜癖が強化されてしまう。
嗜癖を読み解こうとすると,「愛情」とは何なのかということ,そして人間関係の重さを改めて問うことになる。
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