特集 評価について考える
健康寿命の地域保健への適用
辻 一郎
1
1東北大学医学部公衆衛生学教室
pp.108-112
発行日 1998年2月10日
Published Date 1998/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901727
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要約
健康寿命とは,「あと何年,自立して健康に生きられるか」を測る新しい健康指標であり,単なる生存の量だけでなく,健康と生存の質を測定する指標として注目されている。
健康寿命が測るものには,身体機能面に着目した障害のない平均余命(DFLE)と,精神機能面での痴呆のない平均余命(DemFLE)がある。
各指標につき,これまでの報告例をもとに国際比較を行った。その結果,日本人のDFLEは世界で最も長く,身体面での健康レベルの高さが示された。一方,平均寿命の長さほどには日本人のDemFLEが長くないことが明らかとなった。これは日本人の痴呆の罹患率が諸外国より高い(特に脳血管性痴呆が多い)ことによる。
健康寿命は,①地域間比較や時代推移,②障害予防対策の効果評価,③ニーズ把握,の指標として有効に活用できるが,調査に大きな費用と時間がかかること,特殊な統計手法を必要とすることなどから,当面は国または都道府県レベルでの活用が望まれる。
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