- 文献概要
日本人の寿命は世界有数であり,平均寿命は男性も80歳を超え,女性は85歳を超えている.2060年には女性の寿命は90歳を超えると予想される.しかし,もっと重要なのは健康寿命である.何を基礎データにするかによって結果が異なるので,確定的なことを述べるのは難しい.国民生活基礎調査をもとにした統計では,寿命の延びと比べて健康寿命の延びは短く,差が開いている.国民生活基礎調査では「あなたは現在,健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という問いに「ない」と回答したデータをもとにしている.主観的な判断になるので回答者によっては同じような状況でも答えが変わる.非健康率も算出されるが,寿命から非健康期間を差し引く方法で健康寿命を推計した研究では1995年くらいから男性74歳,女性81歳前後で延びていない.つまり,寿命の延び=非健康寿命の延びになる.非健康=寝たきりではないが,この非健康な期間をいかに過ごすかも変化してきている.
筆者自身のことを振り返ってみると,昭和31(1956)年生まれで兄と弟(幼児期に心疾患で死亡したと聞いている),妹がいる.父の両親(祖父は物心ついたときには他界していた)と三世代での家族.祖母は私や弟,妹といった孫の面倒をみてくれたが,歳とともに就床する時間が増え,徐々に介護すべき範囲,時間が多くなり,筆者が高校入学時に亡くなった.基本的には母が介護していたが,孫も多少は助けになったのではなかろうか.兄は大学を出ると家を出て働き始め,筆者と妹は結婚を機に実家から出たため,両親2人となり,父が他界すると母1人で,祖母の時代とは状況が変化した.何度か入院するようなことはあったが,退院後は多少の助けは必要なものの自立していた.筆者もできるだけ実家を訪れるようにしたが,常に家族がいるわけではないので祖母のときのようにはいかなかった.筆者1人の家族史を振り返っても家族構成や介護のあり方が大きく変化している.ある意味,典型的なパターンではないだろうか.
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