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2010年のデータでは,平均寿命と健康寿命は女性で86.3歳と73.6歳,男性で79.6歳と70.4歳であり,約10歳の開きがある.国は2014年に成立した地域医療・介護推進法で,団塊の世代が75歳以上となる2025年に備えて,病院の病床数を減らし高齢者が介護施設や自宅で自立した生活を送ることができるように地域包括ケアシステムを構築しようとしている.このことは将来のわが身あるいは家族がいかに健康に生活し,健康寿命を延ばして平均寿命に近づけられるかが重要であることを意味している.健康寿命とは,「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことを示し,ただ寿命が延びるだけでなく,そこには健康を伴っている必要があるという考え方である.
健康寿命を考えるとき,今後特に問題となるのは高齢者の誤嚥性(嚥下性)肺炎であろう.2011年の厚労省人口動態統計では,肺炎はわが国の死因の第3位となり,その約97%が65歳以上の高齢者で多くは誤嚥性肺炎である.また誤嚥性肺炎のリスク「寝たきり」の原因の1位は「認知症を含む脳血管疾患」で約50%を占める.一方では65歳以上の高齢者が肺炎で入院すると認知症発症のリスクが約2倍になることが報告されている.したがって肺炎と認知症の悪循環が健康寿命にも大きく影響していると考えられ,肺炎罹患のリスクをいかに減少させるかが健康寿命の延伸を諮る意味で重要である.厚生労働省の「国民の健康寿命が延伸する社会」に向けた予防・健康管理に係る取り組みの主な内容のなかにも具体的な取り組みとして,「介護予防等の推進」,「認知症早期支援体制の強化」などと並んで「高齢者の肺炎予防推進」が掲げられている.
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