特集 感染症対策のパラダイムシフト
結核—いまそこにある危機
前田 秀雄
1
1東京都府中小金井保健所
pp.1107-1110
発行日 1997年12月10日
Published Date 1997/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901697
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はじめに—結核撲滅の幻想
結核患者が減らない。この傾向は1990年代に入り顕著となっている(図)。また,塗抹陽性罹患率は80年代以降ほぼ横ばい状態となっている。この原因は,既感染率の高い高齢者からの発症と,感染率の低下した若年者の集団感染によると考えられる。だが,非常に感覚的な表現ながら,「普通」の患者が減っているように思える。結核治療は6〜9か月間の多剤併用初期化学療法により治療が完了する標準治療法式が確立している。つまり,普通に生活する中で発病すれば,数か月の後には問題なく治療完了する。ところが,新たなリスクが2つの点でそれを不安視させる。1つは,果たして治療が完了してくれるのかという危惧,そしてもう1つは,治療完了しただけでは本質的な解決にはならないという懸念である。
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