特集 感染症対策のパラダイムシフト
エイズ対策の変遷
鷹箸 右子
1,2
1足立保健所保健予防課
2前,東京都衛生局エイズ対策室
pp.1112-1116
発行日 1997年12月10日
Published Date 1997/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901698
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はじめに
“パラダイム”が,「ある事柄に対しての,ひとつの定まった学説」あるいは「多くの人に支持されている概念」1)だとすると,そもそも今回のテーマである「エイズ対策」には,パラダイムが存在するのかどうかということがまず問題となる。というのも,“エイズ”については,諸外国で,そしてわが国でさまざまな取り組みがなされているものの,いわゆるこれがスタンダードだとされる,いうなれば誰もが認める完全な対策などというものはまだ存在しないと言えるからである。
昭和62年以降,日本全国の保健所で相談・検査を初めとするさまざまなエイズ対策事業に取り組みはじめてからすでに10年余が経過した。とはいえ,エイズはまだまだ発見されてからの期間が他の疾患に比較すると短く,エイズ対策についての考え方や対応の変化はめまぐるしい。たとえ同じ保健所であっても,1か月前とは対応がまったく異なる場合さえもあるのが現状である。
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