特集 揺れ動く社会規範と保健活動
当事者か声を出していく関わりをめざした活動
井伊 久美子
1
1兵庫県立看護大学
pp.710-715
発行日 1997年9月10日
Published Date 1997/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901628
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はじめに
保健婦の活動は,それがどんな対象であっても,「しかたない」「そんなものだ」という人々の現状に諦めているような意識に働きかけていく内容を多かれ少なかれ含んでいると思う。いわゆる「常識的なこと」に「常識」の範囲で対応していても解決に向かわず,どこかで突破口のための特例をつくる努力が必要とされているのではないだろうか。しかしながら,突破口をつくることは必ずしもスムーズではない。また特例をつくろうとしているうちに関係者と協調しすぎて目的を見失い,突破口のつもりがその出口をなくしていることもある。このような不確かな事態に陥ってしまう要因として,保健婦自身が何かの枠にとらわれていることがある。その枠の1つが,価値観とか慣習のような対象との出会い方を規定するものであり,もう1つは活動の進め方そのものに対する固定観念のようなものだろう。
重要なことは,自分自身も価値,慣習,制度などの「規範」の中にいることを忘れていて,自覚する機会になかなか恵まれないことではないだろうか。何が自分を縛っているか見えていない中での活動はパターン化に陥りやすいように思う。そしてパターン化した活動は問題解決の突破口にはなり得ない。
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