特集 揺れ動く社会規範と保健活動
思春期の揺れ動く「性」に地域保健の葛藤—厚岸町保健指導係の高校授業参加活動
白井 正夫
1
1朝日新聞
pp.704-708
発行日 1997年9月10日
Published Date 1997/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901627
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「変わる世の中」と保健活動の接点を思春期に着目すると…
「援助交際」とか「テレクラ」といった言葉が日常あふれるほど,ここ数年,性に対する思春期世代の意識が大きく変わっている。この変化に,母子保健活動も無縁ではいられない。市町村・保健所がかかわる思春期教室を考えても,目の前の生徒は性に対し新しい意識,価値観をもつ世代なのだ。特集テーマの「新しい社会規範」は文字通り解釈すると,守るべき社会の新しいルールとなる。重い言葉なのでここはそれを必要とする「変わる世の中」と置き換えてみたい。そして,性教育と地域保健のかかわりをみると,世間の変化に敏感に対応できる保健活動がどうしたらすすめられるだろうかを考えてみたい。「赤ちゃんふれあい体験事業」を通して高校の性教育授業に参加する北海道厚岸町保健指導係の活動に,思春期世代の変化を見つめながら地域保健と学校教育の新しい接点を探る試みを見た。
厚岸町は北海道東南部,釧路地方の太平洋沿岸にあり,コンブ漁で知られる住民1万3000人の町。町内には普通科高校のほかに水産高校があり,漁業の町らしさがうかがえる。かつて2万人が暮らした町も,漁業の200海里規制などによる地元経済の低迷で,高校卒業者など若者を中心に町を出る人が続いている。
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