連載 ジェンダーの視点から地域・生活を考える・12
女性と健康—リプロダクティブ・ライツ/ヘルス
中山 まき子
1
1鳴門教育大学
pp.1123-1127
発行日 1996年12月10日
Published Date 1996/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901493
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ジェンダー・バイアスが見えてくるとき
私の研究室に所属した学生さんの多くが,「ここにきてから,なんだか考えることが多くなりました」と嬉しい感想を述べ始めたかと思いきや,やがて「この頃ボーイフレンドとうまくいかないんです」とか,「先日両親とけんかになっちゃって,友達と何だか話が噛み合わないんですよね,自分の夫に少しあきれて」と,今度はグチをこぼしに来る。
ジェンダーの視点から,世界を,日本を,身近な社会や人々を見つめ直し始めると,「なぜ? どうして? 変だ」という疑問が次々と生じ,やがてフラストレーションを抱え込み,義憤を感じるようになるからだ。そんなとき,私は迷いつつ,つぶやく。「その姿は,あなたや私の少し前の姿,そう思わない? 日本社会にはジェンダー・バイアスが蔓延しているもの。憤りは,そのことが少し見えてきて,問題自体が認識できるようになってきた証拠。そこから始まるんだよね。でも,なんならジェンダーの視点からものを見ることをやめてみる?」と。すると,「そんな,もう戻れません。だっておかしいことだらけですから」というたくましい返事がかえってくる。
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