特集 保健活動のパラダイム・シフト
[私自身のパラダイム・シフト]
保健婦主導から,住民と共に学ぶ保健婦活動へ
標 美奈子
1
1神奈川県立衛生短期大学
pp.992-994
発行日 1996年11月25日
Published Date 1996/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901465
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私の姿を映してくれた介護者との出会い
「やはり家で看たほうがいいのですね……。確かにそうかもしれませんが,私の生活はどうなるのでしょう」
痴呆の義母を介護している嫁が,呟くようにいった言葉である。当時私は痴呆性老人の訪問を始めた頃で,痴呆になり始めた本人の不安や焦躁,そして病院や施設に入り亡くなっていく人,そんな人の姿を見て,何とか本人が心やすらかな生活が送れないものかと思っていた時期だった。だから,「こういう病人は家で看るのがいいのでしょうか」と嫁に聞かれたときに,「ご本人にとっては家で家族に囲まれていたほうが幸せだと思います」と答えた。それを聞いた嫁が「やはり家で看たほうがいいのですね……」と呟いたのである。子育てが一段落し,第二の人生を計画していたお嫁さんにとって,介護は自分の夢を捨てることだった。彼女は,その後ずっと家で介護し続けたのだが,呟くように言った彼女の言葉の重みを私は忘れることができず,ずっと心の中に引っ掛かっていた。
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