特集 これからの地域保健を語ろう—保健所法改定を機に
[地域保健法をめぐる状況分析]
都市部の状況と課題
長岡 常雄
1
1東京都衛生局医療計画部
pp.955-961
発行日 1994年11月25日
Published Date 1994/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901039
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はじめに
今回の厚生省の「地域保健の統合的見直し」に伴う保健所法の改正によって,政令市内の機構改革や,県型保健所における保健所と市町村の役割をめぐっての新たな動きが起こっている。これらの動きは,人口の高齢化に伴い増大する医療・福祉ニーズをどのような新たな体勢で支えるかという大きな流れの1つとしてとらえないと,ここ数年の矢継ぎ早な国の施策とともに理解することが困難であろう。
1961年に国民皆保険が実現し,それまで医療を受けることをためらっていた高齢者が,その後の地方自治体による老人医療費の無料化の政策もあって,医療を受けやすい状況が生まれてきた。1973年には老人福祉法が改正され一部の自治体だけでなく,全国的に老人医療費の無料化が実現した。このような背景のもとに,高齢者の入院受療率は急速に上昇していった(図1)。このことは,特別養護老人ホームなどの福祉施設よりは,高齢者にとって病院は負担なく比較的容易に入所できる施設となり,医療はさほど必要としないが,在宅でのケアができない高齢者の入院――いわゆる社会的入院を増加させた一因でもあった。
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